それは確実に体を貫いていた・・・

引き抜くと同時に少女は前に倒れ込む。

壇上に近い席に座っていた人に、血飛沫が飛んだ。

少し遅れて悲鳴が上がる。

少女の白い翼は赤く染まっていった・・・

 

 

 

 

私――サラ=クロネーゼが通う学校でのことだった。

自殺だった・・・

証人は500人以上。

白き翼を持つ者――天使のみが通う学校の卒業式のことだった。

自殺した少女は無口な人だった。

それなのに、壇上に上がるやいなや、振り返り、

「今まで、育てて頂いて有難う・・・」

と、小さいがはっきりした声で言ったので、

皆は驚いていた。

そして、いきなり長めの短剣を取り出して、自分の胸を貫いたのだ。

急いで、治療魔法を施したが、すぐに息を引き取った。

 

 

 

 

動機は分からなかった。

遺書も無かったのだから・・・

だが、推測は出来た。

この学校では闇眷属の者

――堕天使でも受け入れていたのである。

普通の天使のみが通う学校ではほとんど無い事である。

・・・彼女は堕天使だった・・・

天使族の中でこの事は致命的な事だ。

どんな迫害を受けたとしても、文句が言える立場ではなくなってしまうのだから・・・

だから、これからの独立した生活を苦にした自殺。

それが学校側の見解だった。

しかし、私はそういった用意されたような答えじゃなくて、

彼女――イリア=レイランの友人として、

彼女の本当の気持ちが知りたかった・・・

 

 

 

 

・・・結局何も分からなかった。

性格、出身上、友人もほとんど居なかったし、

調べようにも調べようが無かった。

そもそも、人の気持ちを理解する事など、空を掴む事と同じだ。

自分の気持ちさえ、時に理解出来なくなるのだから・・・

 

 

 

 

これしかないのだろうか・・・?

私は、彼女の最期の場所へと向かっていた。

手には短剣を握り締めて・・・

其処へ行けば分かるような気がした。

正確にはそこで彼女と同じ事をすれば・・・

同じ立場になれば分かるのではないかと考えたのだ。

理由があるわけではない。

でも、もうそれくらいしか思いつかなかった。

まだ、現場となった講堂には、

「KEEP OUT」のテープがかかっていたが、構わずに通り越した。

 

 

 

 

壇上に上がる・・・

「今まで、育てて頂いて有難う・・・」

彼女と同じ言葉を言ってみる。

分からない・・・

そして、手にしていた短剣を自分の胸に突き立てた。

激痛が走る。

傷口からじわりと滲み出た血が、

私の服や翼を朱に染めていった。

ふと、何故自分がここまでしているのだろうと思った。

やっぱり、自分自身すら正確には分かっていないのだろう・・・

 

 

 

 

気付くと、心が物凄く安らいでいた。

先ほどまで感じていた激痛は感じなかった。

彼女はこれを求めていたのだろうか・・・

 

 

 

 

ふと気付くと、隣には彼女が立っていた。

こちらに優しく微笑み、手を差し伸べている。

私はその手を取って、一緒に歩き始めた。

 

 

 

 

「イリア、何で自殺したの?」

歩き始めてしばらくした後、疑問を聞いてみた。

彼女は少し当惑していたが、口を開き始めた。

「現実が嫌になったからかな〜。」

「学校側が言ってるような感じなの?」

「ちょっと、違うな。

別に迫害されるのは大丈夫だったんだけど、

そんな世界自体が嫌になったって感じ。

貴女ならなんとなく分かるでしょう?

堕天使のサラさん。」

そう言って、彼女は微笑んだ。

「うん、なんとなくだけどね。」

私はそう言って頷いた。

 

 

 

 

「貴女は自分の心が分かってるのね。」

私はそう呟いた。話してる間にそう感じたのだ。

すると彼女は答えた。

「そんな事無いわよ。

分からない時だってあるよ・・・。

でも、それが人間なのかもね・・・。」

「やっぱり人間ってそんなものなんだね。」

私は妙に納得していた。

 

 

 

 

翌日、血に彩られたサラの死体が見つかった。

その顔はとても安らいで見えたという・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

自分で書いていて段々と意味不明となった小説です(ぉぃ

まあ、それでも一応意味不明にならないように努力したのですが・・・

まだ、力不足ですね・・・

何時になっても補えそうにはありませんが・・・

 

ちなみにこの小説の初めの部分は、僕が中学校の卒業式の時に、

「こうなったらどうなるだろ?」と考えてたものです(マテ

何でか知らないけれど、ふとそんな事思ったんですね。

前から、妄想癖が結構強い方ですからね〜。

まあ、そんなこんなで出来た作品です。

変な作品ですみません(汗