事件が起きた町の西はずれで四人は集まっていた。
あれから三日後の事である。
この一帯は、無法地帯となってしまっているので、
姿を隠すには丁度良いのだ。
「有難う御座いました。」
レベッカが改めて礼を言った。
「いえいえ、例を言うならお兄さんの方ですよ。
あれだけの詳しい情報が無ければ、私達だって、動けませんでしたから。」
友里がそう答えると、彼女は兄に向かって、
「お兄ちゃん、有難う。」
と言った。
「ん、あ、ああ・・・。」
兄であるクレムスは照れ笑いを浮かべながら、返事した。
兄は今回の公開処刑の事について、本当に良く調べていた。
公開されない、詳しい情報までも、ほぼ網羅していた。
姿を消すことが出来る、水属性魔法「バニッシュミスト」で潜入していたのである。
あの二人の実力があれば、ある程度の情報でも可能だったかも知れないが、
あそこまで完璧に出来たのは、その情報のおかげだった。
「でも、どうして捕まったの?」
「ち、ちょっと綾女・・・!」
「あ、別に構いませんよ。」
「いいの?」
彼女は頷きながら、
「そんな、隠すようなことじゃないと思ってますから・・・。」
と言った。そして話し始めた。
「丁度、十五日前のことですね・・・。
私達は普段二人で狩りをしてるんですが、
その日は兄が風邪をひいてしまっていて・・・。
一人で行ってたんです。」
クレムスは、少し気まずそうに、下を向いて、頭を掻いた。
「そしたら、助けを呼ぶ声が聞こえたんです。
その方に、駆けつけてみると、二人の男がウルフの群れに襲われてたんです。
私がついた時には、すでに一人は倒れていて・・・。もう死んでました。
もう一人も逃げられるような状況では無かったので、
瞬時に一掃する必要があったんです。
だからそこで、スターレイザーを使ってしまったんです。
ためらいとかはありませんでした・・・。
魔女と呼ばれることよりも先に、助けることが脳裏に浮かんでいましたし、
行動から言って、魔女呼ばわりされる事もないのでは、とも思っていましたから・・・。
その考えが甘かったんですね。
ウルフ達は一掃出来たのですが、それが原因で助けた人に魔女呼ばわりされて・・・。
・・・それで捕まったんです。」
最後の方の声には、その時を思い出したのか、
やりきれなさが含まれていた。
「理不尽な話ね・・・。」
綾女が相槌をうつ。
友里は無言だった・・・。しかし、痛々しいまでの表情だった。
「今でも、行動から言えば、魔女と呼ばれるいわれはないと思うんですけどね・・・。
闇眷属と言うだけで、もう世間は魔女としてしまうんですね・・・。」
「恐い事だけど、そんな世の中なんだよね・・・。」
綾女が嘆くような感じで言った。
「おかしいわよ、本当に・・・!」
綾女はその響きに驚いた。
あの冷静沈着な友里が珍しく、感情を表わに言ったからである。
「私も事実を調べて知った時、こんなのは絶対におかしいと思いました。
あの日、妹が言ったように、風邪で寝てたんですが、
外がやたら賑やかになったので、様子を見に行ったんです。
そしたら、丁度連れて行かれる所で・・・。
普段は魔法をまったく使わない、妹が何故って思いました。
絶対に何かあると思って、その通報者を訪ねたんです。
そして真実を吐かせた時、愕然としました・・・。」
しばらく、沈黙が続いた。
やがて、レベッカが口を開いた。
「私にも、手伝わせてくれませんか?
やっぱり、こんな世の中おかしいです。」
「え、・・・いや、どうする、友里?」
「足手纏いにしかならないかもしれませんけど、
こんな世界変えたいんです。」
「私もお願いします。妹と同じ気持ちです。」
二人は少し相談した後、友里が答えた。
「仲間はある程度、人数が多いほうがいいし、
二人とも、戦力になsるし、こちらからも是非お願いしたいところです。」
兄妹は顔を見合わせて、微笑んだ。
「でも、一つだけ注意が・・・。」
「何ですか?」
綾女が友里の後を引き継いで答える。
「もし、私達と一緒に行動するなら、
もう安心な生活は送れないって事です。
今なら、まだ別の国に行って、魔女と言うことを隠せば、
安心な生活が送れる・・・。
それでも構わない?」
「こんな現実を見せられて、黙ってはいられないし、
目の前の問題から逃げてるような事はしたくないんです。」
兄が強い口調で言った。
「私も同じです。それに私の場合は、
もう名前とか知られてしまっているし、どの道安心な生活は送れませんから・・・。」
「それも、そうだね。」
「分かったわ、それじゃ、これからよろしくね。」
と言って、友里が手を差し出した。
四人はお互いに握手をした。
そうして、四人は協力する事となった。